全ての人が自分らしく生きられる社会へ
私たちの社会には、人口のおよそ3%〜10%(約10〜11人に1人)の割合で性的マイノリティ(セクシュアル・マイノリティ)の人々が暮らしているとされています。この数字は、左利きの人やAB型の人と同じくらいの身近な割合です。しかし、多くの当事者が差別や偏見を恐れ、周囲にカミングアウトできずに生活しています。
誰もが「自分らしく」生きられる共生社会の実現に向けて、性の多様性や現状の課題、そして私たちにできることについて考えてみましょう。
「性のあり方」を形づくる4つの要素
「男か女か」「異性を好きになるのが当たり前」という固定観念にとらわれず、性の多様性を理解する上で基本となる4つの指標があります。これらは単純な2択ではなく、グラデーションのように人それぞれ異なります。
• 身体の性(からだのせい): 遺伝子や生殖器などの構造に基づく、出生時に割り当てられた性別。
• 性自認(心の性): 自分がどの性別であるかという認識。男性・女性だけでなく、どちらにも当てはまらない(ノンバイナリー/Xジェンダー)と自認する人もいます。
• 性的指向(好きになる性): 恋愛感情や性愛の対象がどの性別に向かうか(あるいは誰にも向かないか)。
• 性表現(表現する性): 服装や言葉遣い、髪型などを通じて、自分が表現したい性。
これらを組み合わせて表現される言葉がLGBTQ+などの総称です。
性的マイノリティが直面している社会的困難
現在の日本の社会制度や環境は、まだ「異性愛」や「男女二元論」を前提とした仕組みが多く、当事者は日常生活のさまざまな場面で不利益や生きづらさを感じています。
【日常生活・社会での主な課題】
├── 学校・教育 ── いじめ、不登校、制服やトイレの選択肢の制限
├── 職場・雇用 ── 就職活動での差別、ハラスメント、福利厚生の対象外
└── 法的・医療 ── 同性婚が法的に認められないことによる、共同遺言や税制の不利益
こうした周囲の理解不足や孤立から、当事者の精神的健康(メンタルヘルス)の悪化や自殺リスクの高さが大きな課題となっています。これらを受け、国でも法務省による啓発活動や「LGBT理解増進法」(令和5年成立)の施行といった対策が進められています。
私たちにできること:「アライ(Ally)」になろう
性的マイノリティを理解し、支援したいという意思を持つ人のことを「アライ(Ally=同盟・支援者)」と呼びます。特別な知識がなくても、日常の意識や行動を少し変えるだけで、誰かの救いになることができます。
(1) 「いないもの」として扱わない
「男のくせに」「まだ結婚しないの?」「彼氏/彼女はいる?」といった言葉は、相手が異性愛者・シスジェンダー(心と体の性が一致している人)であることを前提にしています。会話の際は「パートナー」や「お連れの方」といった、特定の性に限定しない表現を選ぶことが大切です。
(2) 差別的な言動に同調しない
「ホモ」「オカマ」「レズ」といった言葉を冗談や蔑称として使うことや、そうした会話に笑って同調することは、当事者を深く傷つけます。こうしたハラスメントに繋がる言葉は使わない、見過ごさない姿勢が求められます。
(3) アウティングは絶対にしない
本人の同意なく、その人の性的指向や性自認を第三者に暴露することを「アウティング」といい、重大な人権侵害(パワハラ指針でも禁止)にあたります。もし信頼されてカミングアウトを受けたら、その秘密を厳守し、これまで通りに接することが基本です。
性の多様性を認めることは、性的マイノリティのためだけのものではありません。「男らしさ」「女らしさ」という役割の押し付けから解放されることは、マジョリティ(多数派)も含めた誰もが、自分らしく伸びやかに暮らせる社会をつくることへと繋がります。