令和元年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、県民の皆様にも多大な被害をもたらし、生活や事業活動にも深刻な状況が発生しています。この新型コロナウイルス感染症は、人と動物双方に感染する「人獣共通感染症」の一つです。
これまで世界を騒がせたMERSやSARSといった感染症も人獣共通感染症であり、いまや人の感染症の約6割を占めると言われています。こうした人獣共通感染症は、森林開発などにより、生態系の崩壊が進み、人と野生動物の生存領域が近づきすぎたことで、動物が持つ病原体が抵抗力のない人間にも感染するようになったものです。
こうした人と動物の共通感染症や、抗菌薬が効かなくなる薬剤耐性(AMR)など、公衆衛生上の重大な危機になると認識されている分野横断的な問題に対して、医師・獣医師・行政関係者など人・動物・環境の衛生に関わる人が連携して取り組む考え方を「ワンヘルス」といい、今や世界の共通認識となっています。
そして、福岡県で開催されたワンヘルスに関する国際会議で採択された「福岡宣言」に基づいて、「ワンヘルス」を理念から実践に移行させるための取組が進められてきました。今回、福岡県議会が議員提案で制定した「福岡県ワンヘルス推進基本条例」は、このワンヘルスの実践に向けて、基本となる事項(基本理念、基本方針及び基礎となる体制整備等)を定めたものです。
福岡県では、安全で安心な社会を構築するため、人・動物・環境の衛生に関わる「ワンヘルス」に関する施策を推進するとともに、県民の皆さんに「ワンヘルス」の理念についてご理解いただけるよう、シンポジウムや福岡県ホームページなどを通じて情報発信をしています。